2012/09/22

残波岬海岸


初老の運転手さんに昔、残波岬でさんざん潮干狩りをした話をすると、運転手さんは灯台から最初の道でハンドルを左にきってタクシーをしばらく進めると、道路わきに停車させた。




「貝掘りやったんなら、たぶんこの辺だよ。」

運転手さんは潮干狩りと言わずに「貝掘り」と言った。確かに潮干狩りの日には大量のサザエなどを持ち帰ったものだ。ごつごつした岩場は潮だまりから道路のすぐ下まで来ていて、記憶にある通りだ。

しかし・・・・。

「・・・・・」

運転手さんは独り言のように続けた。

「でも、今はもうダメだね。この辺の海は死んでる。」

「捕れないの?」

「ぜんぜんダメ。もうこの辺には何もいない。」

「今でも捕れるところはあるの?」

「もっと北の方に行けば、捕れるかもしれないけど、このあたりでは無理だね・・・」

沖縄本島の北端に追いつめられたヤンバルクイナのように、あの沢山いた青い宝石のようなスズメダイや、岩ガニそして、サザエはもう残波岬海岸からは消えてしまったようだ。

また一つ、いつのまにか僕は貴重な幼児体験の場所を失ったことを知った。




にほんブログ村 海外生活ブログ 全世界情報へ

0 件のコメント:

にほんブログ村 海外生活ブログ 全世界情報へ

Copyright (C) 2008-2014 たまーむ All Rights Reserved